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音楽ゲームから「キー音」が消える日 #音ゲーマー達の発信所

あいさつ

 皆様お久しぶりです。

 #音ゲーマー達の発信所 (1枚目) Advent Calendar 2015 - Adventar

 21日目(e-amuのメンテ時間的な意味で)を担当させていただきますはるくと申します。

 今回は「キー音」について以前から考えてきたことを文章化いたしました。

 取り急ぎの文章なので改訂は都度行っていこうと思います。よろしくお願いいたします。

概要

 「音楽ゲーム」と呼ばれるジャンルが誕生して約20年、コナミbeatmaniaのブームによってもたらされた「キー音」という概念は、2015年現在の主流の音楽ゲームからは淘汰されつつある。

 現在の状況における「キー音」の必要性と、それに取って代わられた「操作音」について、「筐体性能」と「人間の視聴覚の認識のズレ」の観点から考察を行う。

※注意点

 この文章における「筐体性能」に関しての文章は、一般的な観点からの推測による部分が大きく、実際の筐体性能について具体的な検証を行っていない事をご了承ください。

 「キー音」の誕生

 音楽ゲームというジャンルの誕生は1996年の「パラッパラッパー」が起源と言われている。

 


パラッパラッパー stage1 Parappa The Rappa - Chop Chop Master Onion

 パラッパラッパーは音楽に合わせてボタンに対応した「掛け声」を合わせるのが基本であり、当時は楽曲に対しての干渉は行っていなかった。

 キーを押すことで楽曲に干渉する事ができる初めての音楽ゲームは1997年の「beatmania」が初出となる。


beatmania - u gotta groove

 これは当時のDJの作曲方法として「サンプラー」のボタンに音を用意し、リズムに合わせ操作することで音楽を作曲することが主流だった事から発想を得て作られたゲームである。(当時はパソコンで曲を作る方法に関しては「DTM(DeskTop Music)」という言葉があてられていた)

 音楽を演奏するゲームとしての「音楽ゲーム」の第一歩であるこの作品の大ヒットによって、プレーヤー側が「キー(ボタン)によって楽曲の構成に干渉する音」として、「キー音」という言葉が誕生した。

「キー音あり」ゲームの拡大とその派生

 beatmaniaのブームを受け、コナミ音楽ゲームBEMANIシリーズと位置づけ、数々の派生作品を発表していった。大きく分けて3つに分類される。

 キー音ありのもの

 楽器を模したもの(キー音はデバイスの音を模したもの)

 ダンス系ゲーム(キー音なし)

  上2つは実質的に「キー音によって演奏できる」ゲームであり、ダンスゲームを除いては「音楽ゲーム=キー音あり」のスタンスをとっていたことが分かる。

 またコナミbeatmaniaの適用範囲の広い国内特許を持っていたこともあり、他社は同様のゲームを出すことが出来ない状態にあった。(余談ではあるがキー音周りの特許についてはdrummaniaのみ却下されている。YAMAHAの特許範囲内だったためであり、筐体にYAMAHA社のロゴがついていたのもその影響かと推測される)

 そのため国内の他社は主として2つめの「楽器を模したもの」にアレンジを加えた作品を作ることでこれらを回避することになる。

 このうち太鼓の達人に関してはその直感的なデバイスと、学童も対象とした客層の幅広さから、長きに渡り音楽ゲームの代表作品として存在し続けている。

jubeat」というキー音なしの音楽ゲームの衝撃

 誕生当初こそ上記のような作品が誕生したものの、その後はシリーズ化されるヒット作が誕生しないまま5年以上が経った2008年、その作品は突如として日本のゲームセンターに登場し、音楽ゲーマーの注目を掻っ攫うことになる。

 「jubeat」である。


Jubeat Y.S-Y 凛として咲く花の如く Extreme

 縦置きにした液晶パネルの下側に16枚の透過ボタンを固定した構造で、透過した部分に配置されたノートを「上から押す」仕組みである。

 従来の音楽ゲームでネックであった「画面の指示をコントローラーの入力と一対一対応しなければならない」という所が、「見たところを押す」操作に置き換わったことで、音楽ゲーム初心者の取り込みに成功し、当時のbeatmaniaIIDXを遥かに凌ぐ大ヒットゲームとなった。

 しかしこのゲーム、ロケテスト時に最も注目を集めたのが「キー音がない」事であった。

 当時はキー音こそが音ゲーたる所以であると考えられていたことや、beatmaniaのシミュレータ界隈の事情から「キー音がない=音楽ゲームとしてはまがい物」という認識を持たれていた当時、このゲームに関してはかなりの批判が巻き起こることとなった。

キー音無しが主流となったjubeat後の音楽ゲーム

 結局のところ、jubeatが大多数に受け入れられたことによって、「キー音がなくても音楽ゲームとしては面白いものが作れる」という認識が生まれた。

 このヒットにより、その後もコナミはキー音のない音楽ゲームを続々と生み出していった。

 キー音のないコナミ音楽ゲーム

  • jubeat
  • REFLEC BEAT(判定音)
  • SOUND VOLTEX(一部エフェクト音)
  • BeatStream(判定音)
  • MÚSECA

 また、jubeatはそのルール上の性質からタッチパネルと相性が良いため、iOSに移植され(その後Androidにも移植)それに影響された派生ゲームがアプリとして多数公開されている(あまりに多いので一覧は省略)

 他社のアーケードゲームについてもキー音のない作品が多数登場。とくにセガの「project DIVA」「maimai」「チュウニズム」の3シリーズは学生をターゲットとした音楽ゲームとして急成長し、現在では音楽ゲームの主流を担うまでに至っている。

 こういった状況の中で現在の(楽器の音ではない)「キー音あり」の音楽ゲームである「beatmania IIDX」「ポップンミュージック」については少数派の音楽ゲームとなっており、2年ほど前にポップンミュージックキー音無しの楽曲を入れ始めた事もあり、コナミでは唯一beatmania IIDXのみが全曲キー音有りを守り続けている、というのが現在の状況である。

 

 こういった現在の状況で(演奏音のゲームを含めた)「キー音あり」という作品にどれだけのメリットがあるのか?というのが今回の内容である。ここまでが前置きだが非常に長くなってしまった。

キー音が「聞こえる」まで

 さて、キー音というのは「デバイスを押した時に鳴る」音である。しかし、ボタンを押した「瞬間」から音が鳴るのではなく、以下の処理が連続的に起こっていると考えられている。

  1. キーを「押した」と人が認識する
  2. ボタン(センサー)のスイッチがONになる
  3. プログラム側でONを認識する
  4. 音声として処理する(別処理で判定処理も)
  5. ほかの音声とのMIX・イコライザー処理を行う
  6. デジタル-アナログ変換を行う
  7. アンプからスピーカーに送る
  8. スピーカーからの音が耳に伝わる

 これだけの処理が毎回行われる。これはソフトウェアだけでなく、スイッチの感度やハードウェアの性能によっても左右される難しい領域である。

  また、ゲームセンターによってはヘッドホンアンプを外付けでつけている場合もある。その場合は7から先が別系統に分岐する。この場合、本来の7-8で調整されていたタイミングと同期が取れているかは未知数である。(ヘッドホンアンプの入力にノイズフィルター等が絡むのでたいていは従来より遅れると考えている)電源ノイズのフィルタは入っていないそうです。

 さて、beatmania時代・そしてIIDXの8thまでのこれらの処理はゲームに特化したプレイステーションベースの専用基板を利用しており、映像再生はDVDプレーヤーによる再生という別系統で処理していたため、処理は比較的軽かったものと考えられる。

 しかし、9thから組み込み機器用のWindowsXPに置き換わった影響で、映像はDVDから荒くエンコードされ、音声系統との同時再生を行うようになった。

 優先度を割り振るリアルタイムOSの仕様上、従来の処理である「プレイ部分の描画」と「BGM・キー音声」に「映像ソース」を加えた3系統の同時処理はかなりの負荷になっていたと推測できる。

 結果として、ボタンを押した後の発音はこの時から遅れが生じ始めた。基板性能の向上によってある程度は改善されたと考えられるが、OSが現在も同一であり、(WindowsXP。組み込み用なのでサポート終了は別だが来月まで)OS内部の処理による発音遅れは少なからずあるものと推測される。

 この「音が遅れる」という問題はキー音ありのゲームに限った話ではない。タップ音しか鳴らない近年のタッチパネルの音楽ゲームでも、負荷の大きいかつ重要度が高い音楽や映像再生がもたつかないように対策をとった結果、タップ音の遅れが「人が分かるレベルで」生じているゲームは複数存在する。

 特に最近話題の「アイドルマスターシンデレラガールズ・スターライトステージ」については3D処理も多用している関係かこの現象が顕著であり、タップ音をオフにしてプレイする人も(私も含め)存在する。

ボタン発生音の遅れによる影響とゲーム側の対策

 「ボタンを押したら即座に音が出ない」というのはキー音ありの音楽ゲームとしては致命的となる可能性がある。

 例えば、4つ打ちのバスの音を15Fおきに叩く場面が存在するとしよう。プレーヤーにとってはこの「バス音」が実際の楽曲のリズムと捉えるのである。

 あるタイミングで叩いた音が正しい判定を表示し、次の判定も正しい判定を表示したとする。この場合、プレーヤーはこの間隔が15Fであると判断するはずである。しかし、音声の遅延が1Fあった場合、バス音は「最初に叩いた瞬間から16F後」に鳴ることになる。

 もちろん、最初に叩いたバス音も1F遅れて出力されているので、バス音を頼りに1F早めに叩いていれば15Fの間隔を保つことは出来る。しかし、あるタイミングでバス音を聞き逃した場合、叩いてから16F後のバス音の間隔を「15Fと勘違いする」ことに繋がるのである。

 これを15Fと思って叩くと16F後に叩くことになるので次は17F後にバス音が鳴り、それも参考にしてしまうとまた遅れ…という連鎖を繰り返し、最終的にはゲーム側は「悪い」判定を下すだろう。これはリズムに乗って演奏する「音楽ゲーム」として正しい姿なのだろうか?

 

 一つの回避策は存在する。キー音の開始音をフェードイン、もしくはBGMにも若干の音声をもたせたうえで、重ねて再生することで違和感を解消する方法である。これであれば正確な演奏さえしていればリズムのズレは気にならなくなるので従来と同様の(この呼び方には語弊があるが)「演奏感」が保たれる。

 しかしこの方法にも欠点がある。

  1. 制作側の処理の複雑化
  2. 「外れた演奏」の場合の音声の貧弱化による演奏感の弱化
  3. 「細かいキー音」の処理をするとより聞こえにくくなる

 1としては楽曲全体として考慮しつつキー音に処理を加える事になるため、従来の「サンプラー」的な音源作成は難しくなる。

 2は中級者以下に対して厳しい課題を突きつける。音の出はじめのキー音のボリュームを弱めることになるため、3と合わせて叩いた音がわからなくなる現象を生み出してしまう。

 キー音あり音楽ゲームには誕生当初から「うまく演奏しないと音楽として満足したものが聞けない」という欠点があったが、その問題は(音が細かくなればなるほど)ある程度熟練した人に対しても立ちはだかることになる。

「音声とは別系統の」映像の遅延問題

 ここまで、「音楽ゲームにおける音声の遅延」の話をしてきた。しかし、皆さんに馴染みのあるのは音声よりも「映像の遅延」だろう。音楽ゲームもブラウン管から液晶モニタに変わった時にさんざん議論になり、今なおシューティングゲーム格闘ゲームで重要視されている問題である。

 これ以降の話を進める上でここではっきり言っておきたいことがある。

 「映像の遅延は音声の遅延とは関連性がない」

 これを頭に入れておいて欲しい。今のゲームは「映像も遅れていて」かつ「(基本的には)音声も遅れている」のである。そしてそこには相関性は存在しない。

 基本的に、「映像の遅延のほうが音声の遅延よりも顕著」である。なので普通の液晶テレビなどについては、「意図的に音声にディレイを掛けて映像の遅延に合わせて」いるのである。ブラウン管を捨てた現代のテレビはその「遅れ」を気にしていないだけなのである。

 音楽ゲームにおいても同じことが言える。「音声が遅れていても、同じ時間だけ描画が遅れていれば結果として音楽ゲームは破綻しない」のである。

 しかし「キー音」と「筐体差」が絡むゲームだとそうはいかなくなってくる。

 例えばbeatmaniaIIDXの場合、以下の処理があると思われる。

 

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  ゲームとしてここまで複雑化しているうえ、最悪なことにbeatmaniaIIDXの場合は「筐体外部の要素すべてにおいて(改造も含めた)多種多様の筐体差」が存在する。それらに対してすべて対応するのは困難であろう。

 しかし、「キー音が無い」ゲームに関してはここまで考える必要がなくなる。なぜか?それは、「入力に対してフィードバックが必要ない」からである。

フィードバックが必要ない「キー音なし」ゲーム

 「キー音あり」の音楽ゲームは、押した音に対する「発音」をゲーム側が返す必要がある。発音を即座に出すために「予め音源を用意しておく」必要もあるため、プログラムの「裏方」はフル稼働していなくてはならない。

 しかし、既に楽曲が完成されている音楽ゲームに関しては「発音」は不要であり、もっぱら押したタイミングと「ゲームの処理上で正しいと思っている」タイミングが合致しているかどうかに注力すれば良い。音声発音もせいぜい判定音を幾つか用意したものを都度出せば良いので、キー音ありゲームと比べれば処理は遥かに簡略化出来る。(ここまで省略してきたが、楽器演奏系の音楽ゲームもこれに該当する)

 また、「ゲーム側が正解だと言っている」タイミングとプレーヤーのタイミングが合わないのであれば、「判定を前後にずらす」ことで容易に解決も可能である。つまり、ゲームの処理上の判定にかかわらず「プレーヤーが正確に演奏できている」という成功体験を享受しやすいのが「キー音なし」ゲームの利点なのである。

タッチ系センサーは判定が「早い」

 現代の音楽ゲームは「タッチ系センサー」を使っているものが多い。最も主流なのは「静電容量式タッチパネル」で、iOSAndroid系のゲーム、チュウニズムやcrossbeats REV、ビートストリームと言ったアーケードゲームに使われている。他の手段としてはリフレクビートDJMAX TECHNICA(おそらくはシンクロニカも)については「赤外線式」を採用している。

 これらに共通することがある。「タッチする前から"触った"という判定が出る」という事である。

 静電容量式というのは、指先の肉が「コンデンサの役割を果たす」事を利用して、指を近づけた時の物理量の変化をセンサーとして用いているものである。 指先の「コンデンサ度」は人それぞれであり、時期によっても変わるため、ある程度許容幅を持った設計を行うことが一般的になっている。 チュウニズムに関してはこれが顕著であり、薄手の手袋をしても大丈夫なように「数ミリ離した状態」でも反応する様にできている

 赤外線式は「画面の表面上に赤外線が通過して」おり、それを遮った時に判定が発生する。これも赤外線にある程度の「高さ」を持たせているため、ぎりぎりタッチしていない状態でも反応することがある。

 

これらの話に関しては以下のサイトが詳しい。

www.itmedia.co.jp

 

 これらから言えることは、プレーヤーが「触った」と感じる前よりも早く「タッチ判定を知る」事ができる、つまり「入力処理タイミングの前借り」が出来るようになったということである。勿論その時間は一瞬で、なおかつ静電容量センサの位置検出の時間も必要になるため差し引きマイナスになる可能性も十分考えられるが、内部処理を連続的に行う必要がある音楽ゲームとしては見逃せない仕様である。 

 特にチュウニズムに関してはセンサー系統を簡略化している関係上、この利点を大いに利用している可能性も考えられる。チュウニズムの「タッチ音の発生」に関してはとても反応が良いのは事実である。

「キー音」は本当に必要か

 ここまで、現代の「キー音あり」の音楽ゲームは、かつて卑下されてきたほかの音楽ゲームに対して優位な点はさほど無いという事を述べた。

 キー音ありのゲームの利点とは「叩いたら演奏音が鳴り、音楽に没頭できる」という点である。しかし、それを活かした音楽作品は、現在のゲームの楽曲群の一体何割に該当するのだろうか。むしろ、音楽に合わせてライブ感覚で「手拍子をする(クラップ音)」「鈴を鳴らす(ベル音)」行為を疑似体験している「キー音無し」音楽ゲームの方が、よりふさわしい姿になっていないだろうか。さながらそれは最初に挙げた「パラッパラッパー」のように。

 beatmaiaIIDXは高品質な楽曲に没頭しながら「画面上部から出現したノートを、○○○ms後に正確に打鍵する」リズムシューティングゲームとして最高級の作品なのは紛れも無い事実である。しかしキー音の必要性が薄れるこの時代、ポップンミュージックと同じように「キー音無し移植曲」が登場する日が来るのではないか。私はそう恐れてやまないのである。