slappin' beatsの補助的なblogです。
音ゲー評論系中心ですが他の内容も取り扱う予定です。
旧blog→http://d.hatena.ne.jp/har-k/

秋葉原クレーン研究所とトライアミューズメントタワーという2つのゲームセンターで起こった事件についての所感

はじめに

 クレーンゲームのゲームセンターで海賊版とされるグッズを頒布したとして摘発されたことと、私がよく通っていて大会にも何度も参加したことのある別のゲームセンターでのネットワーク停止について、私なりに思ったことをここにまとめようと思います。

(12/07 20:10)事前通告について・関係者のリンク先削除のため文体変更・ALL.Netについて文章内リンク追加

(12/07 00:55)原告→告発者に変更

(12/07 00:15)トライタワートライアミューズメントタワーに変更

(12/07 00:06)「セガの行動について」補遺

(12/06 23:55)各所訂正・補遺

何が起こったのか整理

秋葉原クレーン研究所の「書類送検

初めてゲーセン側が罪に問われた

 海賊版と呼ばれるコピー商品を景品に使っていたということで、ゲームセンター側が初めて罪に問われた、という話です。著作権法親告罪なので、告発者はライセンサーのサンライズだと思われます。

 いままでは作っていた側が逮捕されることはよくある話だったのですが、頒布目的の所持まで追求したのは初のケースです。

 商品が同人グッズの製造方法と同じなのが厄介で、公式絵をコピーして使うのはまだ見分けがつくのですが、同人絵を勝手にコピーして素材にすると絵描き本人やライセンサー以外は見分けが全くつかなくなるため、実際にはこういう会社は後が絶たないのが現実のようです。(裏を返せば同人グッズも危ない、ということです)

 参考までに、見分け方については以下のサイトで紹介しております。

 また、ゲームセンターは景品問屋から商品を仕入れている(つまり製造側との直接取引はしない)ことが一般的ですが、そういう意味で今回のケースは随分と踏み込んだ判断だなと感じるわけです。

 ちなみに、セガの店舗運営を行っていたという関係者の証言によると、こういうグッズはヤの人のシノギだそうです。

全てのグッズが偽物だったのか?

 ただ、この記事には

署が景品を押収して調べたところ、正規品は一つもなかった。

 と書かれていますが、店内のすべてのラブライブグッズが偽物だったというわけではなく、恐らくは海賊品のキャッチャー内の商品とその在庫が全て違法だったという意味だと考えています。海賊版グッズはカードケースやミニポーチ、キーホルダー等そこまで大型のものは作られない傾向にあります。それを踏まえると、秋葉原のど真ん中にあるゲームセンターで、キャラが大量にいる作品のグッズが店内全部で140点と言うのは少なすぎます。

 現に該当するゲーセンのツイッターでもライセンス作品の宣伝は行われており、1ヶ月前にもフリューから出ているラブライブのグッズが挙げられています。

 

書類送検=逮捕ではない

 いわゆるゴシップ系のまとめサイトでは「逮捕」という言葉が使われてますが、「書類送検」なので身柄は拘束されてはいません。著作権法としては法人は罰金刑ですし、個人としても懲役刑は無さそうな気もします。今は検察の判断を待っている段階でしょうか。

 今後、民法ではラブライブのライセンサーであるサンライズから何らかの訴えを起こされるかもしれませんが、それはまた別の話です。

トライアミューズメントタワーセガのネットワークサービス(ALL.Net)が止められる

 上記のニュースが報じられた後、別のゲームセンターであるトライアミューズメントタワーについて、ネットワークゲームの多くを占めるセガが管理するALL.netの通信を止められてしまいました。

  クレーン研究所との関連性は不明ですが、推測で書くとするならば、 

  1. サンライズが訴えを起こしたクレーン研究所の事件を受けて、
  2. 経営母体が一緒(株式会社トライ)である店舗のトライアミューズメントタワーに対して
  3. セガネットワーク停止を(恐らく一方的に)実行した

ということになると考えられます。

 ちなみにセガのネットワークであるALL.netですが、それが止められる影響は、

がまるごと通常プレイ不可能になるという凄まじい影響範囲であり、ゲームセンターとしては打撃というレベルで済まされない損害になるのではないかと思われます。

これらに対する私の所感

該当のゲームセンターだけの問題ではない

 報道ではクレーン研究所が全て悪いような印象を受けますが、決して該当するゲームセンターだけの問題ではありません。

 私は古くから*1ゲームセンター巡りが趣味なこともあり、全国の大小のゲームセンターを回っているのですが、今回のような海賊版をはじめ、プライズ以外の高額商品、ないしは射幸性を強めたキャッチャー装置が置いてあるゲームセンターは、全国経営をしているチェーン店を除けば未だに半数以上に導入されているのではないかと考えております。プリクラとキャッチャーのみのゲーセン、ないしはキャッチャーのみのゲーセンであるならば尚更です。

 つまり利益性の高いキャッチャー込みでの経営を行っているのが現状のようで、今までは取引先に問屋を介している関係上こういう状況が見逃されていたと思われるのですが、警察側が海賊版の取り締まりをゲームセンター側にまで広めるということは、こういった中小ゲーセンの経営にも少なからず影響が出てくるものと考えられます。

 今後はそういった景品について、問屋からの仕入れは見送られる傾向が続くでしょうし、いつかは解決しなければならない問題であったのは確かでしょう。そのようなゲームセンターの肩を持つつもりはありませんが、今後は経営が悪くなるゲームセンターも結構出てくるのではないか、と予想しております。

 セガの行動について

 セガALL.netの停止は、ツィッター等での情報を見る限りでは突然行われたようです。

 今回の件についてはライセンサーの訴えであるため、セガは直接の関係にはありません。それでも今回の措置に至った理由としては、

  • 関連会社のセガトイズでライセンス商品を扱っている関係上、経営に影響すると判断した
  • 社会通念上、違法行為を行ったゲームセンターに対して契約は続けられない
  • 株主へ申し開きができない

のいずれかが考えられます。経営判断としては真っ当だと思います。

 しかし、それで猶予期間無しに「即座に」経営が立ち行かなくなるレベルの措置を取ったことに対しては疑問が残ります。

 もしこれが事件前から通達があったのならばその「理由」がある訳ですが、前述のとおり、海賊版に対してのゲームセンター側の書類送検は初の事例であり、前例のない事例に対してセガ単独で警告をしていたというのは考えにくいからです。また、その場合は同様の行為をしている他店舗も警告があってしかるべきだと感じます。

  私としてはこういった意見に賛同します。他のゲームセンターも今後、セガが問題だと判断した事象を起こした場合、同様の措置を取られる可能性がありうるという前例が(経営上のリスクとして)できてしまったわけです。

 また、事件発覚からALL.Netの停止まで3日しか経っていないのも気になる点です。前述したように、ALL.Netにはセガだけでなく、バンダイナムコ他のメーカーの作品も導入されていますそういったメーカーにはゲームセンターからレベニューシェアとして代金が支払われている為、これらのメーカもトライアミューズメントタワーからの売上分の利益が減ることになります。

 今回の件は他のメーカーとの折衝を短期間で行った上での判断なのか、それともセガ独断で行ったものなのか、どちらなのでしょうか。どちらにしても驚くべき話だと思います。

トライアミューズメントタワーの今後

 ビデオゲーム音楽ゲームの聖地とも言われているトライアミューズメントタワーですが、今回の海賊版書類送検に関してはトライアミューズメントタワーの店員は無関係であり、職を失う可能性があるという意味では被害者でもあります。にも関わらず、このような事態に至ったのは無念としか言いようがありません。

 とりあえず、告知されていたALL.Net以外のゲームの大会は通常通り運営される予定ではあるようです。存続も含め、今後の動向にも注目していきたいと思います。

最後に

 クレーン研究所の行った行為は許されるものではありません。しかし、中小のゲームセンターに対する風当たりは未だに厳しいのが現状です。

 大型店に対する設置面積のハンデは勿論のこと、大口購入店舗への優先入荷(結果的にチェーン店が先行稼働する)注目新作に対するバーター、系列会社の店舗に対するレベニューシェアの優遇等、中小が不利な要素は数多く存在します。

  イオンと商店街の関係とは違うかもしれませんが、ゲームセンターとしての健全な場の構築を目指すとともに、中小のゲームセンターの生きる道を今後も模索していかなければならないと、私は強く願っております。

*1:ゲーム側にいわゆる「行脚」機能ができる前から